★ 【僕たち綺羅星学園探検隊】ハナタロウを探せ ★
<オープニング>

「あーっ! 夏休みまでもうちょっとだっ!」
 授業も終わりんーっと後ろへと伸びをするタンクトップ少年。
 つんつんした頭は退屈な授業を終えてピンと伸びる。
 HRの先生ががらがらっと教室に入るも少年―鰯 骨太(イワシ コッタ)―は足をぷらぷらさせていた。
「最近、遅くまで学園にいる生徒が多い。日が沈むのは遅くてもご両親が心配されるので早く帰るようにな。以上」
(俺には関係のねーはなしだなー)
「きりーつ、れーい」
 いつものような挨拶で締められ、ランドセルを背負って骨太が返ろうとしたとき女子たちの話し声が聞こえてきた。

「ねーねー、隣クラスのカヨちゃんが昨日から行方不明なんだって」

「聞いた聞いた。遅くまで学校にいてハナタロウにさらわれたってきいたよ」

「えー、あれってウチの学園の怪談だよね。本当かなぁ」

「昔、先輩たちがそれを自主制作で映画をつくってたみたいだけど事故とかで完成できなかったとかママがいってた」

「こわいねー」

「でも、ちょっと興味あるかも」

「やめなよ〜」

 などと3人ほどかたまって雑談をしていた。
「学校の怪談……もしかしてムービースター関係かな?」
 その話を聞いて骨太はにししと笑う。
「よっし、綺羅星学園探検隊をつくってハナタロウの正体を探ろう! さっそく、話の通じそうなのに声をかけてみるか!」
 うっしと気合をいれて、骨太は廊下を駆け出した。
「こら! 鰯! 廊下をはしるなっ!」
 教師の怒声などで、彼は止まらない。

種別名シナリオ 管理番号165
クリエイター橘真斗(wzad3355)
クリエイターコメント学校によくある怪談話。
夜の学校で何ものかの声がして、それを探っていくと消えていってしまう学生たち。
そんな彼らを救い出しましょう。

ムービースターなのか、ハザードなのかわかりません。
自主制作映画については町の人で知っている人はいるでしょうが、あまり話そうとしません。

対策を上手く練らないとミイラ取りがミイラになってしまうかもしれません(ふふふ)

参加者
トト(cbax8839) ムービースター その他 12歳 金魚使い
シャノン・ヴォルムス(chnc2161) ムービースター 男 24歳 ヴァンパイアハンター
<ノベル>

〜事件〜

 シャノンは通行人の胸倉をつかんでドンと壁に押さえつけた。
「おい、ちょっとそこで話がしたいんだが……」
 くいっと親指で夕暮れで暗くなった裏路地をシャノンは指差す。
「ひっ、お、お金ならないです! たすけてぇぇぇぇっ!」
 目にいっぱい涙を浮かべて、通行人は全力でその場から逃げ出した。
 聞き込みをしはじめて、10人。
 今回も逃げられてしまった。
「やれやれ、どこからどう見ても好青年な俺のお願いはなかなか聞いてもらえないのは何故だろうな」
 夏らしくジャケットは羽織っていないが、黒いシャツにスラックス。
 十字架のネックレスに右腕にはシルバーのブレスレット。
 今日は日差しが強いため、さらにサングラスまでしている。
 どこから見てもイカツイお兄さん以外の何者でもない。
「男の方がはやそうだろ思ったが、女のほうに変えてみるか……」
 どこからか入手したメモを眺めて一息つく。
「学校で行方不明事件か……この手の噂は裏で何かあるのが普通だからな」
 誰に言うわけでもなくつぶやくシャノン。
 そうしていると、目の前を夏らしくキャミソールにミニスカートで着飾った20代の女性が横切る。
 シャノンの目でみてもなかなかの美女だ。
「ちょっとそこのお嬢さん。一夜の思い出を俺とつくらないか?」
 シャノンは女性を呼びとめ、サングラスをずらしその瞳をじっと見つめた。
 
〜宵闇〜

 日も暮れた学園に、二つの小さな影が動いていた。
「誰もいない学校に入るのってわくわくするな」
「そうだねっ。けど、こったもいいの?」
 学生なら誰でも知っている秘密の抜け穴を通って中に入ってきたのはことの発端者である鰯 骨太。
 そして、賛同者のトトだ。
「言いだしっぺがいかなくてどうするっての。二人のほうが心強いだろ?」
「そうだね、アカガネもクロガネもよろこんでる」
 にこっとトトは微笑み、アカガネに偵察をさせながら校舎へはいっていく。
 ひたひたと素足で廊下を歩く二人。
 薄暗い校舎はそれ以外の物音はなく、昼間うるさかったセミの声も聞こえてこなかった。
「人の気配はしないみたい」
 前を動く赤い金魚と意思疎通している黒い金魚から情報を聞きながら、トトは答えた。
「もう少し、詳しく探してみよう」
「たしか、映画をつくっていたのは昔の高等部だったからそっちかもな」
「いこう、アカガネ、クロガネ」
 2人と2匹はくらい闇の奥へと突き進んでいった。

〜真実〜

 シャノンは夜の裏路地に女性を連れ込み、腰に手を回しながら熱いキスをした。
「ん〜んっ、ちょっと話が聞きたいんだがいいか?」
 微笑ながらセミロングの女性の髪を梳きあげ、じっと見つめる。
 女性のほうはコクコクと顔を上下させるのが精一杯のようだ。
「綺羅星学園で作られていた、映画。怪談モノについて知らないか?」
 ぐっと抱き寄せ耳元へ息を吹きかけるように囁く。
 こそばゆいのか女性の体がぶるっと震えた。
「その映画の話知っているわ……でも、撮影中の事故で監督がなくなって未完結なの」
 女性のほうもシャノンを求めるかのように手を伸ばしキスをねだった。
 シャノンは軽くキスを返し、女性と顔の距離を広げた。
「事故か……」
「高等部の鏡に頭をぶつけたって……もともとそこの鏡は学園の怪談で、有名なところなの」
 女性はシャノンを引き寄せようとするもシャノンは動かない。
「その映画の舞台も?」
 聞き返すときに、シャノンは女性を抱き寄せキスをする。
「そこの鏡、けれど事件があったときにはずされたとかどうとか……」
「ありがと、子猫ちゃん。いい夢みろよ」
 魅惑の邪眼で昏睡させると、シャノンは女性をお姫様抱っこする。
「時間くっちまったな……急いでかけるか」
 路地の雑居ビルを駆け上がり、シャノンは学園を目指した。
 途中の公園で女性を置いていきつつ……。

〜遭遇〜

 静寂の中にコツンコツンという足音がうまれた。
「え?」
 トトは驚き、周囲を見回す。
 すると、足音が止まる。
「どうしたんだ?」
 骨太は音が聞こえなかったのか、トトのほうを向き首をかしげる。
「いま、足音が聞こえたような……」
 ひたひたと歩き出すトト。
 骨太もそれに続く。
 そして、コツンコツンと新たな足音が追ってきた。
「なんだ! 今の……」
 骨太の顔から血の気が引く。
 トトのほうも目が不自然に動き出す。
「逃げよう」
「そうだな」
 二人はこの足音から離れるため、急いで駆け出した。
 ひたひたひた、コツンコツンコツン。
 奇妙な足音による輪唱。
「これがはなたろうかな?」
「わかんないけど、姿が見えないとなんとも」
 後ろを振り向くと、ぼぅっと金色な何かが浮いているように見えた。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
 骨太は大きな声を上げ目を閉じて全力で駆け出す。
「こった、前!」
 トトも骨太を追いかけだしながら、はっと気づき声をだす。
「え? どぅわっ!」
 廊下の曲がり角。掲示板のあるところへ思いっきりぶつかった。
「大丈夫?」
「俺はいいから、トトだけでも逃げろよ……」
「ううん、僕は友達をまもるよ」
 くるりと金色なものにトトは体を向けた。
 金色なものはカツンカツンカツンと音を立て、はっきりと姿を見せる。
 ぐっと、トトは構えクロガネを向かわせようとする。
「おい、そいつ大丈夫か?」
 その緊張をさえぎるような声が追ってきたモノから聞こえてきた。
 追ってきていたのはシャノンだった。
「しゃのんさん? うん、こったは大丈夫」
「そうか、子供だけで夜の学校を探検するなんて危険だぞ」
「つつ……紛らわしい追っかけ方してくんなよな」
 鼻を撫でつつ骨太は立ち上がる。
「ソッチが逃げるからだろ。何か敵を見つけたと思ってな」
 平然と言いのけるシャノンに二人はしばし唖然。
『こっち、こっちへおいで』
「今の声も兄さんの知り合いか?」
「いや、俺は単独で来た……」
『おいでよ、ねぇ』
 声は廊下の奥の階段の方から聞こえてくる。
「それじゃあ、はなたろうの声?」
「そうだな、急ごう」
 銃の安全装置をはずすとシャノンは声のするほうへと走り出した。
 
〜現実〜

 一階から二階へと続く階段。
 その先の踊り場に鏡があった。
 鏡は血で塗られ、ひびが入っている。
 鏡の中は闇が広がり、少年少女たちが寝ていた。
 声はその鏡から響いてくる。
『おいでおいで』
 銃を構えて撃とうとするシャノンより先にトトが鏡へ近づいた。
「おい!」
「まって、話がしてみたいの」
『君もこっちへ、一緒に……』
「きみは寂しいの? だから子供をつれていっちゃうの?」
『寂しい? ちがう 噂がよんだ これが役目』
「それが君の役目でも、ここは映画じゃないんだよ。人に迷惑かけちゃだめだよ」
『わからない 呼ぶこと それしかしらない』
 鏡をトトは撫でてにこっと笑った。
「君の続きはまた作ってもらうから、もうこんなことやめよう」
『本当に? 役目 かわれる?』
 鏡の中の闇が薄らいでいく。
 それにトトな頷く。
「きっと、君は優しい人として生まれ変われるよ。そのときは友達になろうね?」
『ありがとう……』
 鏡に塗られ血も消え、ひびもなくなっていく。
 そして一枚の綺麗な鏡になると、中に閉じ込められていた少年少女たちが踊り場に開放された。
 鏡はゆっくりと消えていく。
「これで、解決だな」
 骨太は安心と残念の入り混じったような声を出す。
「いや、この子たちを全員、家に送り届けないとな。そこまでが仕事だ」
「なんか、しゃのんさんがいっているの遠足の約束みたい」
 ふふとトトが笑う。
「そうだな、学校のセンセとか似合うかもよ?」
「考えておこう……さぁ、朝まで時間がないぞ。お前たちも少し手伝ってくれ」
 照れ隠しか、二人から顔を背けシャノンは子供を2,3人抱えると学園の外へと逃げるように消えていった。

クリエイターコメントお待たせしました。

ちょっとギリギリで上手く表現しきれなく申しわけないです。

シャノンさんは前回とは変わってかっこいいイメージを優先させてみましたがいかがだったでしょうか?

トトさんの優しい部分が表現できていたのなら幸いです。

ご意見ご感想などファンレターなどでお待ちしています。

それでは、運命の交わるときまでごきげんよう
公開日時2007-08-09(木) 19:20
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